国富論における基本戦略や立ち回りについて説明いたします。
1回以上プレイしている方向けになります。リプレイに臨む前にお読み頂ければと思います。
基本は拡大再生産
国富論はいわゆる「拡大再生産ゲーム」です。さらにキャッシュ=勝利点であり、建設した産業タイルや余った資源コマも勝利点に代わることを考えると、いかに生産力を拡大できるかに全てがかかっていると言えます。他のゲームであるような「どうやってお金を勝利点に変換するか」という要素はあまり意識する必要がありません。
これは拡大再生産ゲーム全般に言えることですが、持っているリソースは産業タイルの建設に全力で注ぎ込み、手元にはできるだけ残さずにラウンドを終えるというのが基本となります。必要であれば、多少借金をしてでも産業タイルを1枚多く建てる方が得になる場合も多いでしょう。
需要と供給の見極め
ただし、やみくもに生産量を増やすだけではダメというのがこのゲームの面白いところです。
5種類の資源(食料、電力、労働者、鉄鉱石、資本)はどれも必要不可欠で、ある1種類を無視するといったことはできません。それと同時に、ある1種類ばかりが大量にあっても意味をなさず、バランスよく集めていく必要があります。
そのため特定の資源が大量に生産されたところで、どのプレイヤーも余った資源を活用することはできませんから、有効なリソースに変換するためには市場に売却するほかなく、価格はどんどんと下落していくことになるわけです。
自分が生産している資源の相場は高騰してほしいので、「この資源は今どのくらいの需要があるのか」を常に把握しておくことが大切です。
具体的には、現在ラウンドや次ラウンドでその資源が何個消費されるかを数えてみることです。食料や電力は現在の盤面と新規建設されるであろう産業タイルの数から簡単に求められますし、他の資源についてもプレイヤー全体でどの程度産業タイルが建設されるかをイメージして予測できます。
そして、その消費量を上回らない程度に生産量をコントロールしましょう。1個か2個足りなくなるくらいに供給をセーブすることで市場価格を上げていくことができます。
第3の工場に参入する
さて、初期配置の2種の工場を伸ばしていると、いずれ供給過多の壁が見えてくることでしょう。そうこうしているうちに市場には高騰資源があらわれ、その生産者は大きな利益を上げ、そうでないプレイヤーは高値でその資源を買わされています。新規参入のチャンスです。
3種類目の工場を始める場合、必ず2マス以上同時に建てるようにしましょう。単体のタイルでは生産効率が非常に悪く、赤字になることすらあり得ます。過剰供給を防ぐためにブレーキをかけるのに対し、新規参入では全力でアクセルを踏み込んでください。
周囲の次の行動を予測する
先ほど述べたように供給過多になった資源は相場が下がっていきますから、他プレイヤーが増産しているさなかに自分も参入するのは共倒れのリスクが非常に高いです。逆に、他プレイヤーが注力していない資源を生産拡大すれば大きな利益を見込めます。
それゆえ「他プレイヤーが今後どの工場を建設するつもりなのか」ということは、このゲームで最も重要な情報となります。市場の動きを予測するために、私たちは常に他プレイヤーの動向に気を配らなくてはいけません。
しかし、それはさほど難しいことではありません。そのプレイヤーの現在の工場の内訳と手元の資源コマから、次に建てるであろう産業タイルはある程度予測ができます。それどころか、次何をするつもりなのかは聞けば教えてくれることさえあるでしょう。相手からしても他人と被ることは避けたいはずですし、お互い棲み分けたいという意思を示せば同調してくれるはずです。
誰と取引するか
資源は毎ラウンド生産されプレイヤー間に流通していきますが、需要はその量を上回ることがほとんどです(プレイヤー達は生産量をセーブしていることは先に説明しましたね)。そのため、必要な資源を取引で調達しきれなかったプレイヤーが必ず現れ、「市場との取引」というババを引かされることになります。逆に資源が余る場合についても同様ですね。
ほとんどの場合市場取引は損でしかありませんから、できるだけ他プレイヤーより先に取引を済ませ、あぶれないようにすることは重要です。そして、自分がそれを回避するだけでなく、「誰をあぶれさせるか」を意識してみましょう。同じ資源を2人から買えるのであれば、トップを走っているプレイヤーとの取引は避けるべきです。
下家にかぶせよう
「取引は早い者勝ちである」という原則をふまえると、「同じ資源を作っているなら、先に売れるプレイヤーが強い」ということが分かります。
これは、「他プレイヤーと競合してでも新しい工場に参入するべきか」を判断する際に役立ちます。競合相手が下家ならば自分の手番が先に来るため売れ残る可能性は低くなりますが、上家と争う場合は取引の機会を失いやすいことに注意してください。
もちろん向こうから持ち掛けられる場合もあるので絶対ではありませんが、傾向としては上家側が有利な競争になります。生産する資源を選択するときは、下家にかぶせると売れ残りのリスクを減らせることは覚えておくとよいでしょう。
自分で使えば売れ残らない
中盤以降、生産力を拡大するときは作った資源の行き先をイメージしておくと失敗が少なくなります。つまり、売るためなのか自分で使うのかですね。さらに深掘りして「あのプレイヤーが黒工場を拡大しているから鉄鉱石をたくさん買ってくれるだろう」まで推測できればベストです。
話は戻りますが、「生産物は余らせない」が鉄則です。しかし複数のプレイヤーによって多量に生産される資源に関しては、どうしても取引に出遅れて余らせてしまう可能性は避けられません。であれば、自分が使う分だけ生産して"早い者勝ちの取引競争"に参加しなければ絶対に余ることはありません。
他プレイヤーが十分な量を生産している資源に参入する場合でも、自給自足のための生産にとどめれば市場の下落を気にする必要はありません。供給が増えて資源が余りだすのは売却のために大量生産している最大手プレイヤーであり、自分で消費する分には価格変動の煽りを受けません。もちろん他資源に比べて相対的な価値は下がりますが、常に高騰資源だけを生産し続けることは極めて難しいことです。
また、これは他プレイヤーへの攻撃としても使えます。本来相手から買っていた資源を自分で生産することで、その相手は自分という顧客を失うことになり、主力商品の価値を目減りさせることができます。
終わりを意識する
このゲームには「一定のラウンド数が経過する」のような決まった時間制限があるわけではなく、いずれかのプレイヤーによる「終わらせようという意思」のもと終了することになります。
ゲームの終了条件は「誰かが旗を使い切る」もしくは「すべてのへクスに旗が置かれる」のどちらかで、いずれも旗=労働者コマが使われることで終了します。
ゲームを終わらせようとするプレイヤーは旗を置ききるために多くの労働者コマを集めておく必要がありますので、その動きがゲーム終了の予兆となります。ちなみに終わらせる理由があるのは1位のプレイヤーのみですが、このゲームでは勝利点が可視化されておらず計算も煩雑なため、誰が勝っているかの判断は肌感覚になることが多いです。現在勝ってそうなプレイヤーと、赤工場を持っているプレイヤーの動向には特に注意しておくとよいでしょう。
では、ゲームが終わると気づいたらどうすればよいのでしょうか。ゲーム終了を妨害することはほとんど不可能ですが、備えることはできます。兆しが見えたら、1ラウンドのみの生産では回収できないような設備投資を控えたり、あらかじめ資源をキャッシュに換えておくなどして、近視眼的にキャッシュを最大化する方針に切り替えるべきです。